背景・問題意識
2005年、YouTubeは設立から急速に成長し、世界中でユーザーを獲得していた。
一方、Googleは自社サービス「Google Video」で動画市場に参入していたが、YouTubeには圧倒的な差をつけられていた。
急拡大するインターネット動画市場において、存在感を確立することがGoogleにとって急務だった。
M&Aの目的(Google側)
Googleは、YouTubeの持つ巨大なユーザー基盤と動画コンテンツの圧倒的な量に着目した。
自社で内製するよりも、成長中のプラットフォームを買収することで市場参入を加速し、
広告ビジネスの新たな収益源とする狙いがあった。
合意した背景・理由(YouTube側)
一方のYouTubeは、急激な成長に伴うサーバー費用や帯域コスト、著作権問題への対応という大きな課題を抱えていた。
個別に資金調達や法務対策を進めるには限界があり、持続的な成長には大規模な支援が不可欠だった。
Googleの豊富なリソースとグローバル展開力、さらにブランドや経営の独立性が尊重される条件を提示
されたことで、YouTubeは買収に合意した。
M&Aの概要
2006年10月、Googleは約16.5億ドル(株式交換方式)でYouTubeを買収。
買収後もYouTubeブランドは存続し、創業メンバーが引き続き運営にあたった。
PMI(統合施策)
買収後、GoogleはYouTubeの自主性を尊重しながら、インフラ面では自社の技術力を活用して安定運用を支援した。
さらに、広告ネットワークの統合を段階的に進め、YouTubeを新たな収益プラットフォームへと成長させた。
成果・インパクト
YouTubeはその後、世界最大の動画共有サイトに成長。
広告収入は急拡大し、Google(現Alphabet)の収益構造の中核を担う存在となった。
また、クリエイターエコノミーの基盤となり、動画を中心としたインターネット文化を大きく変革した。
学び・成功要因
この買収の成功要因は、急成長市場へのスピード感ある投資判断と、買収先の文化や成長力を尊重した統合スタイルにあった。
単なる買収ではなく、「支援と共存」を意識したM&A戦略が大きな成果をもたらした事例である。
最後の問い
会社の成長戦略において、M&Aを手段として選択する際には下記の論点を考えるべきではないのか?
- 何のために買うのか?(例:人材を買うのか、設備を買うのか、商品・サービスを買うのか、競合会社を買うのか)
- どの規模の会社を買うのか?
- M&A後、誰が経営するのか?
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