【M&A裏話】Facebook × Instagram 買収交渉の舞台裏

ケーススタディ

── マーク・ザッカーバーグのスピード交渉術

背景

2012年初頭、Instagramは急成長中だった。

ユーザー数は3000万人を突破し、資金調達ラウンド(シリーズB)でさらに事業拡大を目指していた。

Google、Twitter、さらにはFacebookなど複数の大手がInstagramに関心を寄せており、「次の買収ターゲット」として注目されていた。

ザッカーバーグの決断

マーク・ザッカーバーグは、Instagramが他社に取られることを極度に警戒していた。

特に、TwitterやGoogleによる買収の噂を耳にし、「競合に取られるくらいなら、今すぐ動くべきだ」と即断。

通常、企業買収は長期間にわたるデューデリジェンス(調査)や条件交渉が行われる。

しかしザッカーバーグはこのプロセスを極限まで圧縮し、自らInstagram創業者ケビン・シストロムに直接コンタクトを取った。

交渉プロセス

  • ザッカーバーグは、自身の自宅にケビン・シストロムを招待し、非公式な場で直接交渉を開始。
  • 極めて短期間(数日間)で基本合意に至る。
  • 交渉の焦点は「金額」よりも「Instagramの自主性維持」にあった。
  • Facebookは、買収後もInstagramのブランド、運営体制を独立させることを約束。
  • さらに、Instagramチーム(当時わずか13人)全員をそのまま受け入れる条件も提示した。

スピード合意

  • 交渉開始からわずか48時間以内に基本合意。
  • 金額は約10億ドル(現金+Facebook株式)という破格。
  • Facebookの取締役会には事後承認を取る形で進められた(※ザッカーバーグには10億ドル以下の買収については事前承認不要という権限があった)。

交渉成功の鍵

  • スピード感:競合他社が動き出す前に、短期間で話をまとめた。
  • トップ同士の直接交渉:中間レイヤーを排除し、CEO対CEOで一気に信頼を築いた。
  • 自主性尊重:Instagramの「ブランド独立」「運営自由度維持」というクリティカルな条件を即断で飲んだ。

その後

  • 買収発表時、FacebookはInstagramに一切広告を導入せず、独立路線を強調。
  • 結果、ユーザー離れを防ぎ、むしろ買収後に成長加速。
  • 後年、InstagramはFacebook(Meta)グループの中核事業の一つとなり、数百億ドル規模の収益源に成長した。

まとめ:この交渉から学べるポイント

  • チャンスを逃さないためには「スピード」が命。
  • 本当に大事な交渉はトップ同士で直接、シンプルに。
  • 相手の価値観(独立性や自由)を最大限尊重することで、買収後の成功確率が上がる。

最後の問い

もしあなたがInstagram創業者だったら、どう判断するか?

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